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『ジョーカー』考察好きにはたまらない説明不足で不気味な名作【ネタバレ】
今回レビューする作品は『ジョーカー』。
アメコミ『バットマン』の宿敵ジョーカー誕生秘話を描いたこの作品。
いやあ実に面白い。
バットマンシリーズを鑑賞した後の方がより楽しめますが、未鑑賞の方でも全然OK。
バットマン抜きにして、「ある男が狂人へと変貌する様を描いた作品」として鑑賞しても全然面白いです。
私的なランキングで言えば、ここ10年で10本の指に入る作品なのは間違いないです。
鑑賞する人によって解釈の異なる、いかようにも解釈できる、それがこの作品の魅力。
以降ネタバレあり
『ジョーカー』のあらすじとキャスト
「バットマン」の悪役として広く知られるジョーカーの誕生秘話を、ホアキン・フェニックス主演&トッド・フィリップス監督で映画化。道化師のメイクを施し、恐るべき狂気で人々を恐怖に陥れる悪のカリスマが、いかにして誕生したのか。原作のDCコミックスにはない映画オリジナルのストーリーで描く。第79回ベネチア国際映画祭で、DCコミックスの映画作品としては史上初めて最高賞の金獅子賞を受賞して大きな注目を集め、第92回アカデミー賞でも作品賞ほか11部門でノミネートされ、主演男優賞と作曲賞を受賞した。「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。これまでジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、ジャレット・レトが演じてきたジョーカーを、「ザ・マスター」のホアキン・フェニックスが新たに演じ、名優ロバート・デ・ニーロが共演。「ハングオーバー!」シリーズなどコメディ作品で手腕を発揮してきたトッド・フィリップスがメガホンをとった。
引用元:映画.com
アメコミ『バットマン』シリーズの宿敵ジョーカー誕生にスポットを当てたこの作品。
過去作『バットマン』に登場するジョーカーと、今作『ジョーカー』に登場するジョーカーは別物を考えていいでしょう。
年代的に合わないし、雰囲気が全然違います。
アメコミは読んだことありませんが、映画の方ならマイケル・キートンの『バットマン』・クリストファー・ノーラン監督の『バットマン』3部作を鑑賞した私が言うので間違いありません。
ただ、物語の舞台となるゴッサムシティの荒廃した仄暗い感じは共通しているので、『ジョーカー』鑑賞前に『バットマン』を鑑賞しておくと世界観がわかりやすいですね。
主演と監督
『ジョーカー』は何と言っても主演:ホアキン・フェニックスの演技力が物を言っています。
アーサーのあの疲れ切った不健康な雰囲気、一転してジョーカーとなればうまそうにタバコを吸い意気揚々と歩く立ち姿。
アーサーを演じるため短期間で24kgも減量したというその役者魂。
この作品を観てホアキンのファンになってしまいましたね。
アカデミー賞主演男優賞はダテじゃありませんね。
ジョーカー役と言えばジャック・ニコルソン、最近だとヒース・レジャーの印象が強く新規参入が難しいこの役。
ホアキンは見事に、彼らとはまた違ったジョーカーを誕生させたと言って過言はないでしょう。
そして監督はトッド・フィリップス、『ハングオーバー!』シリーズの監督。
正直なところ『ハングオーバー!』『ジョーカー』以外の作品は存じ上げてないんですよね、ごめんなさい。
ただまあこの『ジョーカー』を観る限り、相当センスのいい監督さんですね。
他の作品も気になるところです。
『バットマン』未鑑賞者も問題ない完成度の高い作品
『ジョーカー』鑑賞前に『バットマン』を鑑賞しておくべきか?
答えは否、観ていなくても全然OKです。
「一人の男が社会から孤立して徐々に狂人へと変貌していく物語」として完成度の高い作品。
バットマン・ジョーカー要素を抜きに鑑賞しても充分に面白い作品なのです。
1970年代~1980年代のアメリカを舞台に、貧富の格差が激しい街で歯を食いしばって生きる精神病の男アーサー。
そんな男が社会から孤立していく様は、ヒューマン作品と言っても語弊はないでしょう。
もし時間があれば『バットマン』3部作の鑑賞をオススメ
ただまあ「バットマンの宿敵ジョーカー誕生秘話」としての側面も楽しみたいのであれば、先に『バットマン』を観ておくことをオススメします。
なぜかと言えば『ジョーカー』の舞台であるゴッサムシティの世界観がよくわかるからです。
ここでいう『バットマン』というのは、クリストファー・ノーラン監督の下記3部作。
- 『バットマンビギンズ』
- 『ダークナイト』
- 『ダークナイトライジング』
この3部作自体も物凄く面白いのでオススメ。
ただね、この3部作全て見ると8時間近く要します。
なげえ。
『ジョーカー』は考察要素が多くて3回鑑賞
『ジョーカー』は観ていて「ん?どゆこと?」ってシーンが多々あります。
何事も明確にせずストーリーが展開していくのが『ジョーカー』の魅力であり、難しさでもあります。
説明不足感の強い感じは、1970年代に流行ったアメリカンニューシネマっぽいですかね。
気になると調べないと気が済まない私。
そんなこんなでここ2か月の間に3回も鑑賞してしまいましたよ、ええ。
とりあえずこの記事では作品の根幹を考察レビューしていますが、掘り下げたいシーンは他にもあります。
別記事にしてその辺も紹介できたらなと考えています。
複数回観ても楽しめる・何度も観たくなる映画は名作。
『ジョーカー』のストーリーは「全てはアーサーの妄想」という考察
まず結論から書くと、ラストシーン以外はアーサーの妄想なのだろうと考察しています。
映画『バットマン』を鑑賞したアーサーが、映画の世界のジョーカーに憧れてそのサクセスストーリーを妄想。
その妄想したサクセスストーリーこそがこの作品『ジョーカー』なのではないかと思うのです。
ラストシーン、それまでのカオスな世界感が一転しアーカム精神病院へとシーンは変わります。
取調室のような部屋で対面する女性から「なぜ笑っているのか」と問われ、アーサーは「ジョークを思いついて」とつぶやきます。
つまり、このアーカム精神病院以前のシーンはアーサーが思いついたジョーク(妄想)なのです。
一見すると妄想と現実を行き来する作品のように見えますが、実はそれはミスリード。
妄想と現実の行き来すらもアーサーの妄想、というのが私の考察なのです。
この考察に行きついた理由は大まかに3つ。
- アーサーには妄想癖がある
- アーサーは映画好きである
- エンジェルナンバー「11」
3回も鑑賞すると、「これは監督からのメッセージだな」なんて思えるシーンにも気付けるのです。
知らんけど。
考察理由1:アーサーには妄想癖がある
アーサーに妄想癖がある点は非常に重要。
ストーリーの中で、アーサーは同じマンションに住む黒人女性に一目ぼれします。
その女性とデートしたり、母親の病室で一緒に過ごしたりとアーサーは妄想を重ねます。
この女性との妄想自体は、作中で妄想であることがネタバラシされています。
アーサーに妄想癖があることを明確に表現しています。
この他にも、自分の好きなテレビ番組に出演しているシーンを妄想したり、全然面白くないのにコメディアンとして爆笑を取っているシーンを妄想したりと妄想のオンパレードです。
考察理由2: アーサーは映画好きである
『バットマン』を鑑賞したアーサーが、映画の世界のジョーカーに憧れたと考察したのには理由があります。
まず、私の考察「ラストシーン以外はアーサーの妄想」であると仮定して話を進めます。
アーサーが色々な映画を観て、その映画の影響を受けたことを匂わせるシーンが多くあります。
作中、明らかにある映画をモチーフにしたであろうシーンや設定が随所に散りばめられています。
例えばこの2作。
- 自宅で銃を構える練習
- 指を銃に見た立ててコメカミを撃つ仕草
- 女性との距離感がおかしい
これらはどう見たって『タクシードライバー』の主役トラビスを模倣しているとしか思えません。
精神を病んでいたという点でも、トラビスとアーサーには共通点があります。
- マレーのトーク番組
- 母親と二人暮らし
- 妄想癖
これも『キング・オブ・コメディ』の主役ルパートを模倣している可能性大。
他にも、トーマス・ウェインに接触するため侵入した映画館でチャップリンの映画を観て微笑むシーン。
物語序盤、涙を流しながらピエロのメイクをするアーサーのシーンもそう。
涙を流しながらメイクをするのはオペラ『道化師』の第一幕のラストまんま。
妻の不倫現場を目撃して怒り狂う道化師カニオ、心を押し殺してピエロとして観客の笑わせるため涙を流しながらピエロのメイク。
理由は違えど、色んな感情を押し殺してピエロのメイクをして仕事に臨む姿はアーサーとカニオに共通する部分です。
これは映画ではなくオペラのワンシーンですが、アーサーがエンタメ鑑賞好きなのを表現していると解釈できます。
以上のことから、アーサーが映画『バットマン』に登場するジョーカーに憧れていても何ら不思議ではありません。
考察理由3: エンジェルナンバー「11」
エンジェルナンバーってご存じですか?
物凄くざっくり言えば、ややスピリチュアルな数字占い的なかんじです。
例えば「ふとしたときによく『66』という数字を目にする」なんてとき、その「66」がエンジェルナンバーと言います。
天使があなたに何かメッセージを伝えていますよって事なんです。
そんなエンジェルナンバー、『ジョーカー』にもちょこっと出てきます。
そのエンジェルナンバーとはズバリ「11」。
- 物語序盤カウンセラーと話すシーンの時計が11時11分
- 物語終盤カウンセラーと話すシーンの時計が11時11分
- アーサーが発砲する銃弾の数11発
いずれも全然強調されてはいないので、気をつけないと見逃してしまいますが、これはどう考えても意図的に「11」という数字を匂わせているでしょうよ。
で、このエンジェルナンバー11が何を示すのかと言えば、「転換期」「思考の現実化」らしいです。
- 道化師として働いていたアーサーが狂人ピエロ:ジョーカーとなっていく
- ジョーカーに憧れていたアーサーが妄想の世界でジョーカーへと変貌していく
- 「ジョークを思いついて」と言ってアーカム精神病院から逃げ出すラストシーン
アーサーの妄想だったジョーカーサクセスストーリーを、現実のものにしようとする転換期を暗示していたのではないでしょうか。
それから、アーサーが11発の銃弾を放つシーンも妄想説とエンジェルナンバー説を裏付けるシーン。
ランドルから受け取ったリボルバー拳銃を使っていますが、6発しか入らないリボルバー銃を11発発射、こりゃおかしいですね。
ここ10年で10本の指に入る名作『ジョーカー』
『ジョーカー』、まじで名作です。
ここ最近、いやここ10年の映画で10本の指には確実に入ります。
好きな作品は?と聞かれれば必ず候補に入る1本ですね。
ストーリーも去ることながら、アーサーを演じる主演ホアキン・フェニックスの演技力がイカれているし、音楽もいい。
それと、好みはありましょうが説明しすぎない展開も最高。
3回観ても、「あれ、あのシーンってどう意味なんだろ?」的なことも多々あるそんな作品なのです。
それからカメラワーク・アングルも秀逸。
例えば車窓から外を眺めるシーン。
物語序盤のバスから外を眺めるどんよりしたアーサー、物語終盤のパトカーから外を眺める楽しそうなアーサー(ジョーカー)。
こんな感じの対比も随所に見られ、「おおぅ」と唸らされます。
アーサー自宅前の長い階段も何度か登場しますが、このシーンも階段を登り降りするアーサーのテンションの違いが素晴らしい。
人によって解釈の変わる作品『ジョーカー』
ということで、『ジョーカー』ネタバレ考察レビューでした。
まず大前提として、この作品は精神を病んだ妄想癖のあるアーサー主観で描かれます。
なので、何が真実で何が妄想なのか物凄く分かりにくい。
何を信じていいのかよくわからない感じが『ジョーカー』の魅力でしょう。
観る人によって解釈の変わる作品でしょうから、「ははーん、君はそう考えるのね」程度に読んで頂けたら幸いです。