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『ブラック・クランズマン』人種の壁とプライドを感じる【ネタバレ】
映画『ブラック・クランズマン』のレビュー記事にです。
テーマは人種差別。
ですが、テーマの割りには軽いタッチで重い気分になりすぎることなく楽しめる作品でした。
『ブラック・クランズマン』のあらすじ
以降、ネタバレも含むのでご注意を。
黒人刑事が白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」潜入捜査した実話をつづったノンフィクション小説を、「マルコムX」のスパイク・リー監督が映画化。1979年、コロラド州コロラドスプリングスの警察署で、初の黒人刑事として採用されたロン・ストールワース。署内の白人刑事たちから冷遇されながらも捜査に燃えるロンは、新聞広告に掲載されていたKKKのメンバー募集に勢いで電話をかけ、黒人差別発言を繰り返して入団の面接にまで漕ぎ着けてしまう。しかし黒人であるロンはKKKと対面できないため、同僚の白人刑事フリップに協力してもらうことに。電話はロン、対面はフリップが担当して2人で1人の人物を演じながら、KKKの潜入捜査を進めていくが……。主人公ロンを名優デンゼル・ワシントンの実子ジョン・デビッド・ワシントン、相棒フリップを「スター・ウォーズ」シリーズのアダム・ドライバーが演じる。第71回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞。第91回アカデミー賞では作品、監督など6部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。
引用元:映画.com
この映画観て改めて思ったよ、アメリカは自由と平等の国じゃないな。
刷り込まれた思考や文化、法律が変わろうともそうすんなり受け入れっれないもんですよね。
ちなみに監督は人種差別を描いた名作『ドゥ・ザ・ライト・シング』でおなじみのスパイク・リー。
主人公ロンはとある警察署で黒人初の警察官になる
今作品の主役の一人ロン、コロラドスプリングス警察署で初の黒人警官になるところから物語は始まります。
警察署の採用面接が超テキトーに描かれていますが、ここはさすがにフィクションなのかな。
ちなみにロンのヘアースタイルはアフロ、めちゃくちゃ似合うしシルエットもめちゃくちゃ綺麗。
秘密結社「KKK」に凸電、そして潜入
最初は資料室での仕事が担当でしたが、その後情報系の部署に配属されたロン。
結構イキナリな展開ですが、新聞広告に載っていた「KKK」の電話番号に勢いで電話をかけます。
クー・クラックス・クラン(英: Ku Klux Klan、略称:KKK)とは、アメリカの秘密結社、白人至上主義団体である。
引用元:Wikipedia
白人のフリして黒人であるロンが黒人を罵りまくる。
そしてKKKのメンバーと接触するキッカケを作るのです。
ここからいよいよ潜入捜査を行う流れとなっていきます。
KKKのコロラドスプリングス支部長ウォルターと会う約束を取り付けますが、ここで問題発生。
ロンはアフロのよく似合う黒人。
白人のフリしていたのが、実際会うとなれば確実に嘘がバレますよね。
「お前黒人じゃねぇか!」と。
で、ここで登場するのが今作品のもう一人の主役、白人警官のフリップ。
ちなみにフリップはユダヤ人。
電話は黒人のロン、実際の潜入は白人のフリップが担当することで話が進んでいきます。
フリップがユダヤ人っていうのもこの作品の重要なポイント。
ロンは黒人自治会に潜入
白人団体:KKKに潜入調査する一方で、黒人団体:黒人学生自治会にはロンが潜入調査。
団体名からもお察しの通り、KKKと黒人学生自治会は互いに対立する立場になります。
この作品の中では、狂暴・暴力的な組織には見えませんが、警察がマークするということはそれなりに危険な団体なんでしょうかね。
やっていることや思想はKKKと大して変わりません、敵対する相手が白人であるというだけのこと。
そしてやたら「クール!」と言うこの組織、こっちはこっちで胡散臭え。
KKK会長の登場とメンバーによる黒人学生自治会への襲撃計画
話しは進み終盤戦。
KKK会長のデュークがコロラドスプリングスにやってきますが、その警護を黒人警官のロンが担当。
この作品が実話ということを考えると、当時の警察は中々無茶やりますね。
黒人を目の敵にしている組織の警護に黒人警官を抜擢するとか、まあ大胆。
ちなみにデューク会長がコロラドスプリングスにやってきたのは、ロンがKKKの正式会員になるイベントのため。
何ともスゴイ展開ですね。
そんなKKKにとっては一台イベントの中、コロラドスプリングス支部のフェリックス達が黒人学生自治会への襲撃を計画。
これはKKKの総意ではなく、フェリックス達の単独行動でした。
黒人学生自治会の女会長(アフロ)の車に爆弾を仕掛けるという何とも卑劣で凶悪な計画です。
さ、ここでようやくロンとフリップの潜入捜査が生きてきます。
この計画を潜入捜査により察知していたロンとフリップは、この爆破計画を阻止すべく動き出すのです。
潜入捜査モノ。
全体を通してハラハラドキドキ系ではなく、コミカルに描かれています。
『ブラック・クランズマン』はオシャレとマヌケを楽しむ映画
『ブラック・クランズマン』は人種差別を描いた作品であることに違いはありませんが、悲壮感ではなく笑いとユーモラスに富んだ実に映画らしい映画に仕上がっています。
鑑賞してみて私が感じた感想を簡単にまとめてみます。
感想1:KKKは秘密結社なのか?マヌケすぎる
KKKは秘密結社なんて言われていますが、どこが秘密なんだ?っていうのが率直な感想。
新聞広告に連絡先書いてるし、白人のフリした黒人に騙されてアッいう間に会う約束しちゃうし。
この作品では、KKKが間抜けな感じで描かれています。
KKKのトップであるデュークもかなり間抜け。
ロンと電話中、「黒人と白人は話し方が違う、電話口でもすぐに気づく」。
こんなニュアンスのこと豪語しますが、その電話口の相手は黒人のロン。
KKKと言えば、白い仮面をつけて過激な活動をしている組織のイメージでしたが、実際は違うみたいです。
作品中で支部長ウォルターのセリフにもあったように、最近では「組織は完全に非暴力」とのこと。
KKKが政界に進出するための布石なんだそうですよ。
感想2:ロンは電話して女とイチャついていただけ
映画全体を振り返ってみると、ロンは比較的安全な任務ばかり。
終盤に体を張る場面はありますが、体を張るのはその場面くらいなもんです。
- 新聞広告見てKKKに電話
- 黒人学生自治会に潜入して会長の女とイチャイチャ
ちなみに会長の女もめちゃくちゃ綺麗なアフロです。
一方フリップはKKKのコロラドスプリングス支部のメンバーに潜入、途中命の危険にも晒されます。
ロンの調子に巻き込まれて、危険な役回りを淡々と引き受けてしまうフリップのキャラも徐々に笑えてきます。
感想3:ロン(黒人)のオシャレ度合いが抜群
作品全体を通して感じたこと、「ロンめっちゃオシャレ」じゃん。
作品の本筋と全く無関係なことですけどね、本作に限らずやはり映画を鑑賞していて感じるのは黒人のファッションセンスとその着こなし。
ロンのヘアースタイル(アフロヘアー)含め、ファッションセンスは作中の登場人物の中でも群を抜いています。
ガタイが良いから着こなし感があるし、肌が黒いことで明るい色の派手な洋服が実に似合う。
実際に70年代のファッションを参考にしているのかは知らないし、70年代のファッションがどんなだかも知らない、だけどオシャレなのはわかる。
他にも真っ赤な服や革のカバーオールも当たり前のように着こなしています。
感想4:黒人とユダヤ人の配役の妙
ロン(黒人)→白人のフリしてKKKと電話
フリップ(白人・ユダヤ人)→ユダヤ人を隠してKKKに潜入、この設定が絶妙。
- 例えば、白人フリップが黒人のことを放送禁止用語連発で罵りまくる
- 例えば、ユダヤ人じゃない白人がユダヤ人のことを罵りまくる
設定上「自分のことを罵る」形になるからこんなセリフにできたわけで、この配役と設定は実に見事。
設定というか、実話を元にした部分なんですけどね。
黒人のロンが黒人の事をdisりまくってるシーンは何だかクスりときます。
まとめ:アメリカ社会における人種差別の根深さを知る
『ブラック・クランズマン』を観ると、アメリカにおける人種差別の根深さを改めて感じます。
この作品に限って言えば人種差別を割とフランクに、深刻な雰囲気では描かれません。
実に日常的に、そこら中に自然とありふれていることのように描かれており、それゆえに人種差別の根深さを感じました。
そう、差別は日常にありふれていて全然特別なことじゃないんだなと。
KKK・黒人学生自治会どちらも最もらしい主張をしますが、渦中にいない人間から言わせてもらえばどっちもどっち。
こりゃあ2020年を迎えた今でも人種差別が問題になるわけだ。
この先も解決するとは思えません。
こんな映画は絶対に邦画では作れない、イイ映画でした。